現在の準備通貨、基軸通貨はドルだがこれから人民元が台頭する時代に?
国際貿易が当たり前の現代において「基軸通貨」「準備通貨」は重要なものの考え方です。これらを簡単に説明すると、国際間の決済や金融取引で軸となる特定の国の通貨になります。
第2次世界大戦以前は「英ポンド」が、第2次世界大戦以降は「米ドル」が基軸通貨として用いられています。2002年に欧州で「ユーロ」の流通が開始されてからは米ドルに次ぐ基軸通貨として活躍しています。なお日本円は4番目。
つまり長きに渡って米ドルが基軸通貨の座にあったわけですが「人民元が基軸通貨に加わった」というニュースが。なぜ中国は人民元を基軸通貨になり得たのか、どんな変化が起こるのかを考えてみましょう。
基軸通貨になるメリットは?
基軸通貨の明確な定義は存在しておらず、国際的な取引や決済に使われている通貨が対象となっているのが現状です。
外国為替での取引で問題になるのは為替レートが動くこと。もしも自国の通貨が基軸通貨になれば、為替レートの影響を受けずにそのまま取引ができるので楽なんですね。
また海外で保持されることが多くなるのもメリット。実際、アメリカはドル紙幣に100ドル札、50ドル札を発行していますが、アメリカ国内では使うことはできません。つまり輸出や海外への支払いに使われているんです。国内のインフレを予防し、国際が買われるチャンスも増えて嬉しいことだらけ。
人民元が基軸通貨を狙う理由は?
これまでは米ドルが基軸通貨として扱われてきましたが、2008年のリーマンショックによって米ドルも絶対に安心できる通貨ではないことが証明されてしまいました。こういった背景もあってドルの不安定さや下落のリスクも浮き彫りになっています。中国から見れば「今こそ人民元を!」というチャンスが到来している、とも取れます。
また2009年のG20金融サミットで中国側は「人民元を通貨SDRに加えるべきだ」と主張。アメリカの反対で実現しなかったのですが、通貨政策、国際金融政策によって基軸通貨にすべく、動き始めました。
通貨SDRはIMF加盟国に配られている準備追加のようなもので、各国の中央銀行や政府が保有、通貨危機などの非常時に加盟国間で構成通貨を交換できる、というものです。
従来の通貨SDRはドル41.9%、ユーロ37.4%、ポンド11.3%、円9.4%という比率でしたが、2016年10月以降は人民元を加えた4通貨に。比率はドル41.73%、ユーロ30.93%、人民元10.92%、円8.33%、ポンド8.09%になりました。
比率を見ると人民元はポンドと円を上回り、世界3位の主要通貨のひとつとなったわけです。
これにより世界的に人民元の信用力が底上げされ、人民元建ての取引が増え、為替変動リスクを押さえながら海外投資を積極化していくことが予想されます。また将来的にドルの座を奪い、人民元こそ基軸通貨にしたいという思惑も。
準備通貨、基軸通貨まとめ
基軸通貨がドルから人民元に置き変わるのではないかという意見もありますが、多くの専門家は「少なくとも数十年の間はドル体制のまま進んでいくのではないか」と予想しています。もちろん大規模な経済危機が起こった場合覆ることもあるかもしれません。
2030年頃には中国がアメリカを抜いて世界最大の経済大国になる、という予想もあります。
しかし中国の決算の8割はドル建て、つまり米ドルに頼っている部分が大きいのもまた事実。短い期間で人民元が基軸通貨になり変わるのはあまり現実的ではないと判断されます。
とはいえこの先どのようになるか分かりません。今後も目が離せない展開になりそうです。